『春と修羅』の中に「風景とオルゴール」と題された詩があります。 この詩は、9月16日に花巻の西方、花巻電気軌道沿いの松倉山方面へ出かけた時に創作された4編のうちの一つです。 作品番号順に「宗教風の恋」、この「風景とオルゴール」そして「風の偏倚」 「昴」があります。
中略
薄明穹の爽やかは銀と苹果とを
黒白鳥のむな毛の魂が奔り
(ああ お月さまが出てゐます)
ほんたうに鋭い秋の粉や
玻璃末の雲の稜に磨かれて
紫磨銀彩に尖つて光る六日の月
中略
ひときれ空にうかぶ暁のモテイーフ
電線と恐ろしい玉髄の雲のきれ
そこから見当のつかない大きな青い星がうかぶ
(何べんの恋の償ひだ)
そんな恐ろしいがまいろの雲と
わたくしの上着はひるがえり
(オルゴールをかけろかけろ)
月はいきなり二つになり
盲いた黒い暈をつくって光面を過ぎる雲の一群
(しづまれしづまれ五間森
木をきられてもしづまるのだ)
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