地球環境に不可欠な水の不思議 | ||
(Ⅰ)沸点100℃の不思議 水は、地球の生物にとって欠かせないものです。しかし、人間は水で生かされていることを忘れ、その大切さを見失ってます。 植物がチッソ、リン酸、カリの栄養素を吸収するのも水がなければならないし、人間の細胞を活性化させるのも水が大切な役割を果たしています。では、その水はどのような性質を持って私たちの生活の中に位置付いているのかを簡単に紹介しましょう。 水が1気圧のもとで、100℃で沸騰するのは何の疑問も持ちませんが、物理化学的に見るととても不思議なことです。 それは、水が酸素と水素からできている極めて単純な化合物だからです。元素の周期律表で同じグループに属する元素は、原子核を取り巻く外郭電子の構造が似ているために、似通った性質を示すのが普通です。ところが、同じ酸素のグループの元素、酸素O、イオウS、セレンSe、テルルTeの水素化合物を見てみると、沸点については水だけが例外的に高く、理論的には水の沸点はマイナス80℃となっています。 また同様に、固体になる水の凝固点も理論的にはマイナス110℃なのですが、実際には0℃と例外的に高いのです。 これは、水分子間の結合力(水素結合)が異常に強いからです。水はH2Oですが、実際にはH2Oの単分子として存在しているのではなく、1つのH2Oは隣接するH2Oと水素結合で結ばれています。お湯を沸かしたときにでる湯気はH2Oの水素結合が、100℃の沸点になったときに切断されたために、蒸気として外に飛び出した結果です。 |
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(Ⅱ)水に浮かぶ氷 氷が水に浮かぶことは常識ですが物理化学の世界から見るとじつはとても異常なことなのです。 一般に液体を冷ますと温度の低下とともにその液体の1ccあたりの重さ=比重は重くなっていきます。水も温度の低下とともにその比重は重くなりますが、4℃を境目として軽くなり始め、温度がどんどん下がって氷になると比重は更に軽くなります。その結果氷は水に浮かぶことになるわけです。 純粋な酢酸〔氷酢酸〕は、16.7℃で固まり始め、先に固まった分が下に沈殿して、肉眼でもわかるように分離してしまいます。 このように、凝固物がもとの液体より軽くなる性質を持っているのは、不思議なことに水以外にありません。そしてこのような不思議な性質を持った水に地球が覆われているからこそ、生命が育まれてきたのです。 |
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(Ⅲ)水の表面張力 水の入ったバケツにタオルの片方を浸しておき、もう一方をバケツの外に出しておくと、バケツの中の水はタオルを伝わって外に流れ出ます。同じようなことをみなさんも経験したことがあると思いますが、これは水の毛細管現象というもので、タオルが細い管の役目をしているのです。 もしこの毛細管現象がなかったら、地表に降った雨は重力でどんどん地下に浸透し、大地に潤いを与えることはないでしょう。そうなると、植物は水を吸収することもできず、さらに地表から水分が蒸発しないので大地の温度調節も不可能になってしまいます。 また、液体は一般に表面積を最小にしようとする性質を持っているので、一滴ずつ垂らすと液体の表面は必ず球状になります。これが表面張力です。 水の表面張力は他の液体に比べてと手も大きく、毛細管現象で液体が毛細管を上がる高さはその表面張力が大きいほど高くなります。 |
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水分子が互いに水素結合で結ばれていることは前にもでてきましたが、水はH2Oの単分子として存在しているのではなく、H2Oの数珠を形成しています。このH2O分子の集団のことを水のクラスターといいます。 では、そのクラスターはどのくらいの大きさなのかといいますと、残念ながら現在は直接測ることはできません。しかし、一般には170・NMR(核磁気共鳴スペクトル)の半値幅を測定して判断しています。この値が小さいほどクラスターが小さいということになります。 |