***技術フォーラム***
_毎年大体9月頃、鉄道総合技術研究所
_鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、昭和62年4月の国鉄改革の際、法律に基づいて鉄道技術研究所と鉄道労働科学研究所などが中心となって、試験研究事業等を承継した財団法人です。
_鉄道総研が実施している研究開発のうち、リニアで親しまれている浮上式鉄道の研究や、ユレダスとして知られている
_技術フォーラムでは、これらの新しい研究
開発を含めて、70項目以上公開された他、国立の研究所(所在地は国分寺市光町)にある15以上の設備や実験
2.環境・省力化・効率化
_環境・省力化・効率化に関する研究開発テーマでは、
_米原風洞は、音の静かさがで世界で最も静かな風洞とのことで、新幹線などの騒音対策の研究に使われています。また、ラダーマクラギはコンクリートの縦形
_この技術フォーラムは一般向けの公開で無料ですから、子供連れで気軽に立ち寄って見ていく女性の方や、外国からの訪問もあり、2日間で1000人以上の訪問者で一日中
_ THEOA というのは、鉄道総研で開発し、実用している総合的な OAシステム で、他の大学や企業などでも用いられており、 勤務、出張、消耗品の要求、運搬通信費の請求、メール、掲示、研究開発状況、収支管理など を総合的・統合的に行うOAシステムで、 ウインドウズ の上で パソコン を サーバーとクライアント とした新しいシステムです。
_この他、 シールドトンネル の覆工を現実に即した荷重状態を設定して計算する新しい設計法や、鉄道総研が考案した補強材による
3.最先端技術と浮上式鉄道
_鉄道の最先端技術・浮上式鉄道の研究として公開されたテーマは、
_このうち、 高温超電導体 による磁石というのは、 イットリウム・バリウム・銅等 によるセラミック超電導体で、 液体窒素(マイナス約170度) で超電導となる磁石の実験が公開されました。因みに、現在の浮上式鉄道の磁石として使用されている超電導線材は ニオブとチタンの合金で、 液体ヘリウム(マイナス約270度) で超電導となるものです。
_また、Bi(ビスマス:蒼鉛)系高温超電導体によるパワーリードは、超電導磁石を励磁する場合に外部から電流を流すリード線を、ビスマス系の高温超電導体の線材を使用して製作し、磁石を冷却する液体ヘリウムの消費量を減らすことに成功したものです。
_因みに、最先端技術のコーナーで公開されたYBCO(イットリウム・バリウム・銅・酸素)によるセラミックの高温超電導体は、セラミックのため線材の製造が難しく、実際にリード線のような線材を必要とする場合には、現在ビスマス系の高温超電導体による技術が進められています。
_なお、山梨実験線における走行実験は4月から開始されていますが、技術フォーラムでは、その走行の模様がビデオで公開されました。
4.安全・高速化・メンテナンス
_このうち、安全支援システムは、最近のパソコンの技術を応用して、事故・安全情報の一元管理、分析評価、安全診断を行うもので、安全管理業務を総合的な立場から支援する技術です。
_また、リングネット落石防護柵は、斜面からの落石を防護するためのネットで、約2トンの岩石を受け止める様子がビデオで公開されました。
_地震に対する安全の見地からの研究は、基礎の耐震設計、地震時の液状化現象を考慮した基礎の設計、地震に対する電力設備の耐震設計等の研究成果が展示されました。
_視覚障害者向け誘導案内システムは、最近テレビで取り上げられて紹介されたもので、視力の不自由な方が杖を持って、ホームなどで案内を受けられる技術で、杖の先にあるセンサーからの情報を、携帯パソコンで判断して音声で知らせるものです。
_セラジェットは、アルミナなどセラミックの微細な粉末と硅砂を混ぜて、少量を車輪とレールの間に噴射して、車輪が
_38番分岐器は、上越新幹線と北陸新幹線が高速で分岐する高崎駅の北側に敷設された分岐器で、長さは135メートルあって、日本では最長で最高速の分岐器で高度の技術を使っており、昨年度の土木学会の技術賞を受賞しています。
_連続走査画像による設備管理の研究は、トンネル、線路、車両など、長い構造物などを対象として、連続に走査した画像で長い画像の巻き物を造る技術で、長いものを管理する場合に必要な技術です。
_また、パンタグラフ緊急降下装置は、き電線の摩耗を少なくする目的でカーボンすり板をパンタグラフに取り付けるためには、カーボンすり板が損傷した時に緊急にパンタグラフを降下させるための装置です。
5.構内の設備等の公開
_車両関係について、
_このうち、ST21台車の傾斜試験装置は、スネーク・トレイン(ST:ヘビのように、くねくねとカーブの線路を高速で走る列車)を開発するために製作した台車試験装置で、カーブを高速で走った時に乗客が遠心力を感じないように、車体を傾ける振り子装置を試験する目的の大型の試験装置です。公開された試験装置は、実際に傾斜試験が行われ、多くの参観者で賑わっていました。
_また、幅拡大車両は、現在の車両の横幅を、安全を考慮しながら限界から少し広げることによって、通勤時の混雑を緩和する目的で研究しているもので、構内に設置されたホームと車両の位置、および車内の広がりを体験するための車両です。
_その他、PCBオイル無害化処理法の試験装置は、PCBを好んで食べるバクテリアにPCBを食べさせて、水と塩酸(人間の胃の中にあるものなので、薄めれば無害になる)に分解してしまう装置であり、現在実験中の設備です。
_この設備は、最近新聞やテレビで報道されており、現在日本中に保管されているトランスの絶縁油などに使われたPCBを分解して
無害化するために開発中の設備です。
6.おわりに
_鉄道総研には、現在鉄道技術推進センター、風洞技術センター、技術情報センターなどの組織があって、技術サービス活動を行っています。
_このうち、鉄道総研のホームページを公開している技術情報サービスセンター、ライラックと呼ばれる鉄道技術文献検索システムを提供している鉄道技術推進センターのコーナー等があり、それぞれ訪問者で賑わっていました。
アップデート:1998年7月25日 e-mail "satortri@aries.bekkoame.ne.jp"