在宅ターミナル患者における膀胱留置カテーテルの実際(男性)


在宅ターミナルケアにおいて疼痛のコントロールと同時に排便,排尿のコントーロールをいかに行うかが問題となることがあります

今回は膀胱留置カテーテルの手技について主に説明します

原則は患者がトイレに行ける間はカテーテルを留置せず自力排尿でコントロールをするのが原則でありこれは患者の尊厳という意味からも大切です
一般に膀胱留置カテーテルを男性に行う場合ある一定のルールを守ってもらえればまず留置はスムーズに行えるものである.しかし在宅ターミナル患者では自力排尿困難な病的な患者に行うことが多いと予想されるので慎重にその操作を行う必要があります

1.膀胱留置カテーテルの適応があるかを良く検討する.安易に留置はしない.
2.元気な時の排尿状態を聴取する
3.尿道外傷,尿道狭窄,淋菌性尿道炎,前立腺肥大症などの既往の有無を確認する
4.がんの転移による下半身麻痺,あるいは片麻痺などの神経障害の有無を確認する
5.排尿障害が膀胱収縮筋障害,外括約筋障害あるいは協調不全,尿道狭窄なのかを推測する
6.排尿障害に影響する薬を服薬していないかどうか調べる
7.便秘の有無を調べる
8.膀胱にカテーテルを留置して患者がどう楽になるのか,一方どういう苦痛があるかを患者本人に説明して納得してもらう

用意する物(意外と多い)

1.留置用バルーンカテーテル(一般に16Frを使用,失敗用に数本そして14Frも)
2.ディスポ手袋(直腸診にも使用)
3.消毒液と綿球
4.鑷子
5.ゼリー(最近はカテーテルに付属している場合がある)(直腸診でも使う)
6.バルーン注入用注射器(10ml)
7.バルーン拡張用液
8.洗浄用生食(P-生食500ml)
9.洗浄液をいれるカップ
10.洗浄用ディスポ浣腸器
11.ウロガード(採尿袋)
12.ガーゼ
13.膿盆あるいは洗面器
14.坐薬(鎮痛剤)

留置の手順

1.右利きの人は患者の右側に立ちます
2.前に述べた患者の排尿状態,既往症を患者に聞きまた世間話しをして患者をリラックスさせます
3.下腹部膨満の有無,手術創の有無を確認しながらディスポの手袋をしてまず直腸診を必ず行います.
(ここで肛門括約筋の収縮状態,便秘の有無,前立腺の触診,直腸癌の有無を確認)
4.道具がすべてそろっていつでも使えるようになっていることを確認します
5.デイスポの手袋を交換し,陰茎を観察し外尿道口を確認します
(包茎の場合はしっかりとむいておきます.浮腫が強い場合でも必ず外尿道口を露出させます)
6.まず左手で陰茎を引っぱる(こうすると約20センチぐらい尿道は直線になります)ようにしてしっかり保持し外尿道口を綿球で消毒します
7.留置するカテーテルの先にゼリーをつけて鑷子で保持します.
8.左手で陰茎を引っぱるように保持し,カテーテルを尿道内に挿入していきます
9.外括約筋部,内括約筋部で軽い抵抗がありますがそのまま最後まで挿入します
10.特別な抵抗がなければバルーンを5-10mlの液で拡張させそのあとでバルーンを内尿道口まで引っぱってきます.抜けなくなった所が内尿道口です.
11.尿が出てくれば,浣腸器で洗浄しウロガードを接続して終了です.尿が出てこない時は下腹部を圧迫して必ず尿がでることを確認しましょう.
12.好き好きですが陰茎にガーゼを巻付けておく場合があります.
13.包茎をむいた人は必ずこの時点で元にもどしておきましょう

留置後の管理

1.交換は個人差がありますが,大体2-4週間おきです
2.洗浄は好き好きですが週2-3回から少なくとも週1回は行いましょう
(膀胱洗浄は感染の原因となるので行なわないという意見もあります)
3.抗菌剤はニューキノロンを1日1-3回投与します
4.管の汚れ具合でこれらを判断します

留置時のトラブル(カテーテルが入らない)

1.外尿道口狭窄
 カテーテルを入れようとしたらすぐ入らない場合の多くはこれです
 (対応)陰茎を引っぱった状態で鑷子で拡張してみます
   これまで尿が出ていたのですから小さな口があります.これを目安に尿道が直線になっていることを信じてまっすぐ挿入し拡張してみます  大体がうまくいきます
(うまくいかない時:そこで操作を中止して泌尿器科専門医に連絡)
2.尿道狭窄
 カテーテルがどうも途中でつっかえるようでしたら,14Frに替えてもう一度試してみます.
(うまくいかない時:そこで操作を中止して泌尿器科専門医に連絡)
 前立腺癌でホルモン療法を行っていると尿道が全長にわたって細くなっています.この場合に限って細いカテーテルが適応です
3.前立腺肥大症
 触診でどうも前立腺が大きい人でカテーテルがどうもつっかえる時
 浣腸器にゼリーを約20 mlすってゆっくり尿道に注入しその後にもう1度試して下さい
(うまくいかない時:そこで操作を中止して泌尿器科専門医に連絡)
 おそらく14Frに変えてもうまくいかないでしょう.細いカテーテルは腰が弱いので入りにくい場合が多いようです)
4.膀胱頚部梗化症,前立腺癌
 無理すると出血しますので早めにあきらめて泌尿器科専門医に連絡

では泌尿器科専門医はどうするか

1.の場合 金属ブジーあるいは糸状ブジーで拡張します.
2.の場合はできれば透視下で尿道造影をして確認したいところですができない場合は金属ブジーあるいは糸状ブジーで拡張を試みます.それでもだめなら膀胱瘻も検討します
3.の場合はチーマン型バルーンカテーテルで試みるかスタイレットを使用して試みますが,この場合もできれば尿道造影を行いたい気持ちです
4.3.と同様の試みを行います.

その他:留置したが尿が出てこない

1.膀胱に尿がたまっていない(洗浄できればOK)
2.洗浄できない場合はカテーテルが膀胱内に入っていない可能性があるのでもう1度試してみる
カテーテルの周囲から出血する
1.膀胱洗浄して出血がなければそのままにしておいて大丈夫(ただし出血傾向がない場合)
2.膀胱洗浄しても出血が続く場合  バルーンを30mlぐらい(5mlと書いてあっても70mlぐらいまでは入る)に膨らまして少し引っぱって前立腺を圧迫して洗浄してみる
それでも止まらない時は泌尿器科専門医

カテーテルの種類

 シリコンコーティングがしてあれば特に高いカテーテルを選ぶ必要はないと考えている
 最近抗菌カテーテルが発売されているが留置期間が長いので適応ではないと考えている

絶対に行ってほしくない事

1.尿道内でバルーンカテーテルを膨らませること   尿道損傷を起して出血の原因となります
 (対策:必ずカテーテルを最後まで挿入する.カテーテルの先端が尿道内にあると全部入らないか抵抗があったりとぐろを巻いたカテーテルが尿道から出てきます)
 (対策:バルーンを膨らます時にカテーテルの先端が尿道内にあるといつもと異なった抵抗を感じますのでその時は中止します.バルーンを膨らませる時に患者が痛がったらすぐやめましょう)
 

いずれにしても経験が大切です.色々経験して考えて解決していきましょう.いつでもご相談にのります
またカテーテル留置のいい方法,トラブルの解決策がありましたらお教え下さい

ご意見コーナー
うれしいことにご意見がよせられました

飯尾昭三先生(1997.8.11)(shiio@ehime.med.or.jp)

留置カテーテルの説明で膀胱洗浄することがルーチンのようになっておりますが、
泌尿器科的疾患でなく一般的な患者の場合は感染を防ぐ意味でも膀胱洗浄はしない方が良いと思います。
私は看護婦や一般医にはカテーテルとハルンバッグはあらかじめ接続した上で挿入することを勧めております。



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